ホルムアルデヒドと家具の関係
知っておきたい7つのポイント
家具を購入する際、デザインや値段だけでなく、安全性に注目したことはあるでしょうか?
安全性とは、構造・強度についてだけでなく、使われている化学物質による健康被害まで含んで考える必要があります。
特に、ホルムアルデヒドという化学物質は、健康に大きな影響を与えることがあります。
今回は、家具販売店の視点から、ホルムアルデヒドについて知っておくべきポイントをお伝えします。
ホルムアルデヒドについて知っておくべき7つのポイント
▼目次
1.ホルムアルデヒドとは
ホルムアルデヒドとは、刺激臭のある無色の気体です。
水に非常に溶けやすく、水溶液の形で「ホルマリン」という名でも知られています。
ホルムアルデヒドは、私たちの生活の中で広く利用されています。
例えば、木材製品の接着剤や合板の製造に使われる樹脂の一部として重要な役割を果たします。
これらの樹脂は、木材に耐水性や耐久性を与え、建築材料としての品質を向上させることができます。
この他にも、繊維の加工、医薬品、農薬、防腐剤、化粧品など利用は多岐に渡り、もはや私たちの生活には必要不可欠と言ってもよいでしょう。
また、あまり知られていませんが、ホルムアルデヒドは自然界にも存在します。
たとえば、植物や樹木が自然に発生させるほか、微量ですが土壌や水中にも含まれています。
日常生活の中では、料理の際に肉や魚を焼いた時の煙や、タバコの煙にもホルムアルデヒドが含まれています。
ホルムアルデヒドは、揮発性が高く、長時間にわたる曝露は健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
短期的には目や鼻、喉の刺激を引き起こし、長期的には発がん性のリスクを高めることが知られています。
2.アレルギーを引き起こすことがある
ホルムアルデヒドはその化学的性質により、アレルギー反応を引き起こすことがあります。
ホルムアルデヒドは非常に反応性が高く、タンパク質や細胞と容易に結合します。
この結合が体内でアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)として認識されると、免疫系が過剰反応を起こし、アレルギー反応が引き起こされます。
ホルムアルデヒドを含む製品に接触すると、皮膚や呼吸器の粘膜が刺激され、かゆみ、発疹、咳、息切れなどの症状が現れることがあります。
特に、長期間や頻繁にホルムアルデヒドに接触することで、免疫系が過敏になり、アレルギー症状が悪化するリスクが高まります。
3.近年問題になっている「化学物質過敏症」
近年、化学物質過敏症が問題になっており、耳にする機会も増えてきました。
この症状は、低濃度の化学物質に対しても敏感に反応し、頭痛、めまい、呼吸困難、皮膚の発疹など、様々な症状を引き起こすものです。
ホルムアルデヒドを含む家具や建材が原因となることが多く、化学物質過敏症の患者にとっては、これらを避けることが重要です。
4.シックハウス症候群と化学物質過敏症の違い
一方で、シックハウス症候群という症状もあります。
シックハウス症候群と化学物質過敏症は、原因が化学物質であること、症状もほぼ同じであることから混同されがちですが、厳密には異なるものです。
「シックハウス症候群」は、建物内の空気の質が悪化することで、住人や利用者が頭痛、目の痛み、喉の痛み、疲れなどの症状を感じる状態を指します。
新築やリフォーム後の建物で起こりやすく、原因となる化学物質はホルムアルデヒドやその他の揮発性有機化合物(VOC)です。
近年の高気密住宅においては、有害な化学物質が室内から外に逃げにくく部屋にたまりやすいために、シックハウス症候群を引き起こしやすいと言われています。
建物全体の環境が問題であり、対策としては換気を改善したり、低VOC製品を使うことが有効です。
「化学物質過敏症」は、特定の化学物質に対して個人が過敏に反応するもので、非常に低濃度の化学物質に対しても強い症状が現れます。
原因物質は多岐にわたり、ホルムアルデヒドに限らず、日用品や環境中の様々な化学物質がトリガーとなることがあります。
化学物質過敏症の対策としては、患者自身がトリガーとなる物質を特定し、それを避ける生活環境を整えることが求められます。
5.ホルムアルデヒドの室内濃度目安
ホルムアルデヒドがどの程度の濃度であれば無害なのか、あるいは健康被害が発生するのか、多くの人が気になるところだと思います。
これは非常に個人差が大きく、微量であっても強く反応する人もいれば、濃度が高くても全く影響のない人もいます。
ホルムアルデヒドの室内濃度については厚生労働省が平成12年に指針を示し、室内濃度が0.08ppm以下が健康上望ましいという目安を設けています。
0.08ppmがどの程度か、体感で把握するのは難しいですが、一つの目安として、濃度0.5ppmが「臭気を感じるレベル」となっていますので、少なくとも臭気を感じる環境では健康被害が発生する恐れがあると考えることができます。
6.フォースター(F☆☆☆☆)とは
日本では、建築材料に対してホルムアルデヒドの発生を抑えるための規制があります。
フォースター表示は、2003年の建築基準法の改定と合わせてJIS(日本工業規格)とJAS(日本農林規格)が認定した製品の安全等級であり、JIS工場で生産されるJIS製品に表示が義務づけられています。
これはJIS製品にのみ適用される制度なので、JIS製品以外、あるいは家具については表示は義務ではないため、表示していない製品も多くあります。
もちろん、フォースターの表示がなくても安全性の高い製品は存在します。
たとえば、当店で取り扱っている「sny work’s」のシェルフについては、等級表示はありませんが、接着剤などの化学物質を一切使用していないので、F☆☆☆☆表示のある製品よりはるかに安全だと言えます。
また、静岡の家具メーカー「すまうと」の製品も、化学物質を使用していないことから、安全性が高いと考えることができます。
フォースターの表示があるということは、言い換えれば「ホルムアルデヒド発散が認められる」ということでもあります。
F☆☆☆☆(フォースター)はF☆☆☆(スリースター)と比べるとホルムアルデヒドの放散値が低いというだけで、F☆☆☆☆が健康的という訳ではありません。
また、建築材料については建築基準法によりホルムアルデヒド放散量についての規制がある一方、家具には規制がありません。
等級表示はあくまで目安とし、実際の製品に触れて感じてみる、製法を確認する、材料を詳しく知るなどして、消費者から積極的に情報を集めることが重要です。
7.家具の材とホルムアルデヒドの関係について
家具に使われる材料は、加工の度合いによって大きく5種類に分類することができます。
集成材は、複数の木材を接着剤で張り合わせて作られたもので、多くの接着剤が使われています。
一方、無垢材やはぎ材は、天然の木材をそのまま使用するか、少ない接着剤でつなぎ合わせたものです。
これにより、無垢材やはぎ材の方がホルムアルデヒドの放出量が少なく、健康被害が少ないとされています。
MDF(中密度繊維板)やパーチクルボードは、木くずを接着剤で固めたものであり、非常に多量の接着剤が使われています。
同じように、合板も板を貼り合わせるために接着剤を使用しています。
そのため、これらの材料はホルムアルデヒドを多く放出する可能性が高くなります。
とは言うものの、無垢材やはぎ材を使った家具は、MDFなどの繊維板に比べると高額です。
家じゅうの家具を全て無垢材やはぎ材にするのは、よほどの事情がある場合を除き、現実的とは言えません。
そういった時におすすめしたいのが、重要度の高い家具から取り揃えていく方法です。
たとえば、長い時間寝室で過ごすなら寝室、いつもリビングに家族が集まるならリビング、小さなお子さまがいるなら子どもの家具を、など、バランスを考えつつ取り入れていくのがよいでしょう。
ホルムアルデヒドを除去するシートや薬剤なども販売していますので、これらを利用してみるのもいいかと思います。
ホルムアルデヒドは気温が上がるとより揮発する性質があるため、夏場の運搬など、トラック内で長時間蒸らされて箱内にホルムアルデヒドを溜め込み、開けた瞬間に一気に放散します。
数日で薄れていきますので、風通しのよい場所で開梱し、しばらく置いておくなどして対策することができます。
まとめ
建築素材に対してはホルムアルデヒドの発生を抑えるための規制がありますが、家具についてはまだ明確な規制が存在せず、対策が遅れているのが現状です。
家具の材質表示は任意であり、法的な義務がありません。
そのためメーカーのカタログなどでは、メインの材くらいしか記載のないものも多くあります。
ビッグモリーズでは、商品を取り扱うにあたって不明な点はメーカーに確認するなどして、できる限り詳しく記載するよう心掛けています。
家具は一度買ったら長く使うもの。
生活に密接に関係するものでもあります。
少しでも健康的な家具を選んで、快適な生活を送っていただけたらと思います。